労働時間と祝日
祝日があまり多いと人間が怠惰になり、国の経済を危うくするのではないかという議論もあった。
祝日は、休日を増加することに目的があるわけではないが、結果として休日になるものであり、その分、総実労働時間の減少をも知らすものである。
しかし、我が国の労働時間は、年間一、九〇九時間(平成五年度、事業所規模三十人以上)である。主要国の労働時間を製造業労働で比較すると、別表のとおりであり我が国は、先進国の中では実労働時間が長く、これを短絡させる必要がある。

また経済社会の実情が休日のように、一斉に休む方式をとらないと休暇をとりにくい実態にあることを考えると、多少の休日の増加は、好ましいことだといえよう。
祝日が一つ追加されただけでは実労働時間は一、九〇一・八時間とわずかに下がるだけである。平成四年度の我が国の有給休暇日数は一六・一日、その消化実績は五六・一パーセントの九・○日に過ぎない。祝日を一日増加し、かつ、有給休暇をすべて消化したと仮定して、ようやく我が国の実労働時間は一、八四五・六時間となる(平成五年度一日当たり実労働時間七・九五時間。祝日を休日としている企業の割合九〇・六パーセントで計算)。
有給休暇を完全に消化したとしてもドイツやフランスの実労働時間よりはるかに多いのであるが、現状は有給休暇消化率は六割にも達していないのであるから、我が国は、まだまだ先進国の中では、長時間労働の国なのである。なお勤勉かどうかは、働<べき時に能率よく、真摯に働くかどうかの労働の質の問題であり、ドイツの例をみてもわかるとおり、労働時間が短いことと勤勉とは、両立しうるものである。
主要国の年間
総実労働時間
| 国 名 | 年間総実労働時間 |
| 日 本 | 2,017時間 |
| アメリカ | 1,957時間 |
| イギリス | 1,911時間 |
| フランス | 1,682時間 |
| ド イ ツ | 1,570時間 |
1992年、製造業労働者
二、 過去の「海の日」祝日化運動
国民の祝日として「海の日」を制定しようという動きは、過去二回あった。
一回目は、昭和三十四年。日本海事振興会(日本海事広報協会の前身)、日本船主協会、日本造船工業会、大日本水産会、全日本海員組合の五団体が「海の日協会」を設立、会長には前田多聞元文部大臣が就任し、映画会などを催して、祝日「海の日」制定を訴えた。
当時、祝日は、昭和二十三年の祝日法制定時のまま九日で、国会議員を中心に倍増論があり、期待感もあった。しかし、昭和四十一年に敬老の日、体育の日、建国記念の日が制定され、「海の日」は実現しなかったため、運動は停止した。
二回目は、昭和四十六年。閣議で丹羽喬四郎運輸大臣が「海の記念日」を祝日にしたらどうかと発言し、官民が協議した結果、前記海事五団体のほか、海上保安協会、日本港湾協会、日本船長協会など十団体連名で要望書を提出し、運動を続けた。しかし、昭和四十八年の祝日法改正では、祝日が日曜日に当たるときは、その翌日を休日にすることが盛り込まれただけで、祝日は増加しなかった。
これら二回の運動は、いずれも海事関係者による部分的、単発的な動きであったが、「海の日」の祝日を制定することは、相当困難なことという雰囲気ができて最近に至っていた。
三、 新たな動き
今回の「海の日」祝日化運動は三回目になる。結果から見れば、三度目の正直になったことになる。